Mouth to Mouse
2004.04.21 発売
COCP-50780
数多くの名曲が収録されたシロップ16gのこのメジャー4作目のアルバム。
「リアル」「うお座」「パープルムカデ」「My Song」
「I.N.M」「夢」「ハミングバード」...書き出すだけでキリが尽きません。かつてこんなにも開かれたシロップのアルバムがあったであろうか。このアルバムを聴いた当時の事が昨日の様に思い出される。
Drの大樹ちゃんの家で、まだマスタリングが終わったばかりだと言うこのアルバムを俺はケーキ手土産にして、胸をワクワクさせながら聴いていた。どの曲も聞き逃すまいと必死だった。どの曲もどの曲も、凄く良くて俺はその部屋で興奮を隠しきれなかった。前作の「HELL-SEE」の流れからこう来たか!と今まで聴いた事がないシロップの姿と、変わらない楽曲の素晴らしさに俺はすっかり胸を打ちのめされていた。聴き終わって、家を出る頃にはすっかり外の空気の寒さで息は白くなっていたが、このアルバムを聴いた直後の興奮でそんな事はすッかりと忘れていた。勿論、当時のロックシーンに産み落とされたこのアルバムの衝撃は今も変わらずリスナーの頭の中にしっかりと焼き付いたままだろう。傑作であり、またシロップのピークポイントを迎えた大切なアルバムである。


木下理樹(ART-SCHOOL)

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“Mouth to Mouse”のレビュー

  1. 14年前、PAの見習いしてたころ。
    もう深夜で電車はなく、ライヴハウスからアパートまでの長い道のりを
    コンビニで缶チューハイ買ってぶらぶら歩きながらこれ聴いてた。
    というか大声で歌ってた。

    「愛しかないとか思っちゃうヤバい!」

    PAにはなれなかったけど、あれはいい夜だった。

  2. 何にも救いがなかったと思っていた私の、お守りのようなアルバムでした。大声で泣きながら歌って死ぬほど救われた。変態、夢、希望の流れが最高。

  3. 当時CDを購入したとき、歌詞が載っているブックレットが妙にいい匂いがするという仕様で、さらに中には今でいうinstagramのようなポートレートがあり、街、木々、女性の唇や脚、腕が映ったものも多く載っていてやはり妙にドキドキしたものである。時を経て今ではもうその妙にいい匂いがするということはないが、聴き返してみても艶っぽさのようなものはやはりある。
    ラブソングがいくつかある。喉に刺さる魚の骨のように後を引くトラウマ”うお座”、別冊マーガレットばりに愛が爆発する”Your eyes closed”など、このバンドらしさは健在だが、全ディスコグスの中で最も対外的なアルバムだろう。メロウな”Mouth to Mouse”、実存の叫び”I・N・M”なども素晴らしい。また、ドラムンベースを消化したロック・チューンや打ち込み、ストリングスを導入するなど、楽曲の豊潤さもうかがえる。
    傑作シングル『My Song』では「本能を無視すれば 明日死んじまっても別に構わない(”夢”)」と言いつつ、幸福な家庭を持ち、甘い生活を夢見てしまう姿があったが、本作でも「妄想リアル もっとSO REAL」「嘘に酔う元気無くしちゃ駄目」とリリックにあるように、やはりニヒリズムに染まりきれないのがこのバンドの最大の魅力だろう。生(性)と死、リビドーとデストルドーを廻るドキュメントのようなアルバムである。
    なお、サブスクではボーナス・トラックとしてsingle ver.の”リアル”も聴ける。

    ところで、”Your eyes closed”で「笑って疲れて目を閉じた」のは、”My Song”に出てくる「寝顔を見ていたい」あなたのことなのか、それとも”イマジン”で出てくる「最終で帰っても「おかえり」って目をこすって」迎えてくれる妻なのかとか考えてしまいます。

  4. 曲名からは想像もつかない「夢」 「希望」
    からの、聞いたこともない言葉の曲名「メリモ」

    生きんのがつらいとかしんどいとか
    めんどくさいとか
    そんな事が言いたくて えっらそうに言いたくて
    二酸化炭素吐いてんじゃねえよ

    この言葉に何度救われたでしょうか。